ヒロ兄ちゃんの言葉が頭をかすむ。
そんな朝9時。
うむぅ〜
そんなこといってもなぁ…
ヒロ兄ちゃんがあんなこというから朝から基本、不整脈だ。
…朝は不整脈にならないとも限らないが…
とりあえず顔でも洗うかと部屋からでた。
「あら、早いじゃない?昨日遅かったのに」
母ちゃんが部屋から出てきたボクに台所から声をかける。
「お?あ…ぁあん…」
ドラマでも見ないこの怪しい返事。
「朝ご飯食べないと思って片付けちゃったわよ」
はや!
「食べる?」
「ぉあ?…い、いいや」
なぜ自分がここまで挙動不審か意味が分からない。
不整脈のせいだ。
そうさ。
そう…
顔を洗い、とりあえず着替えることにした。
博多駅来れる?なんて言ったものの、マイのおじいちゃん家はほぼ博多なわけで、
ボクの家から博多までは1時間かかる。
「あんたどっか出かけるの?」
「ぉお?ぅん、博多までちょっと」
「何しに?」
「あそびに?」
無駄な疑問系。
「車で送ろうか?」
母ちゃんは多分ボクの体を気遣ってくれているのはわかる。
わかる。
わかるのだが…
なんだかなぁ
マイと福岡で会うってのは、なんだかもうつき合っているみたいで気恥ずかしい。
「いや、電車で行くよ」
「そう?」
母ちゃんは心配そうに言った。
「じゃあ行ってきます」
そんなやり取りが気まずく、勢いで家を出た。
駅に着くととりあえずコーヒーを買い、ベンチに腰をかけた。
「…お前九州男児ならそこまでされて明日何も無いなんて…ないよなぁ」
ヒロ兄ちゃんのプレッシャーでやたら落ち着かない。
何も無いなんてって…ナニをすればいいんですか!
ナニを!
ナイニーwo
ドウスィタラー
イインディスクァ?
どんな国の外国人だ!
うむ、冴えない一人つっこみだ。
ヨシッ!
そんな妄想にふけるボクを不思議そうに見つめる親子。
ボ…ボクそんな変な顔してました?
…
「…ぎょっさん?」
へ?
「ぎょっさんでしょ!」
…は、はい
「ヨーコ、覚えとー?」
ヨーコ?
ヨーコ…
!!!!!!!!!
オノヨーコ!!!
いや、これはギャグではなく本名、小野陽子。
幼なじみで男子は影でヨーコを
『レリピー』
と呼んでいた、オノヨーコ!
スポーツ万能、オノヨーコ!
成績イマイチ、オノヨーコ!
レリピーレリピー、オノヨーコ!
そんなオノヨーコ…
「おぉ、久しぶり」
と駆け寄り、ベビーカーに乗っている小さい方と握手した。
「そっちはヨーコじゃなかよ、ガハハ」
ガハハって…
「結婚したと?」
「はやりのできちゃった婚!ガハハ」
コイツでも結婚できるのか…
ガハハ
「で、この子はリョウ、先月1歳になったんでちゅよー」
と赤ちゃんの手を振って言った。
「よろちくー、ギョサーン」
ほぼマリオネット状態のリョウ(1歳)
さっきのガハハはどこいったんだ!
「やっぱ子守唄はビートルズ?」
「ガハッ!もう小野じゃないから違うわ!がはは」
そっか。
そいつは残念だ。
というかビートルズってガラじゃないか。
「今からどこ行くの?」
とヨーコが聞く。
「博多」
「いっしょっちゃんねー、私も博多行ってそっから大阪まで帰るのよ」
大阪?
ガゴン、ガゴン。
そんな話をしていると電車がきた。
「大阪に住んどると?」
「そうや、ワイは大阪に住んどるんや!ガハハ」
嘘くさい関西弁。
しかしこの感じは関西のおばちゃんオーラをまとっている。
ていうかワイって…
そんなこんなで博多まで一緒に行くことになった。
そしてヨーコのガサツな感じがもやもやしていた自分にはちょうど良く思えた。
ガハハ…
(つづく)



