2007年09月29日

13章 言葉 01

「お前白血病だったら恋愛しちゃいけないって言うのか?」


ヒロ兄ちゃんの言葉が頭をかすむ。

そんな朝9時。


うむぅ〜


そんなこといってもなぁ…


ヒロ兄ちゃんがあんなこというから朝から基本、不整脈だ。
…朝は不整脈にならないとも限らないが…

とりあえず顔でも洗うかと部屋からでた。



「あら、早いじゃない?昨日遅かったのに」
母ちゃんが部屋から出てきたボクに台所から声をかける。



「お?あ…ぁあん…」




ドラマでも見ないこの怪しい返事。

「朝ご飯食べないと思って片付けちゃったわよ」


はや!


食べる?」




「ぉあ?…い、いいや」






なぜ自分がここまで挙動不審か意味が分からない。

不整脈のせいだ。

そうさ。

そう…

顔を洗い、とりあえず着替えることにした。
博多駅来れる?なんて言ったものの、マイのおじいちゃん家はほぼ博多なわけで、
ボクの家から博多までは1時間かかる。

「あんたどっか出かけるの?」

「ぉお?ぅん、博多までちょっと」

「何しに?」

「あそびに?」

無駄な疑問系。

「車で送ろうか?」

母ちゃんは多分ボクの体を気遣ってくれているのはわかる。



わかる。





わかるのだが…




なんだかなぁ


マイと福岡で会うってのは、なんだかもうつき合っているみたいで気恥ずかしい。



「いや、電車で行くよ」



「そう?」
母ちゃんは心配そうに言った。




「じゃあ行ってきます」



そんなやり取りが気まずく、勢いで家を出た。



駅に着くととりあえずコーヒーを買い、ベンチに腰をかけた。




「…お前九州男児ならそこまでされて明日何も無いなんて…ないよなぁ」




ヒロ兄ちゃんのプレッシャーでやたら落ち着かない。
何も無いなんてって…ナニをすればいいんですか!


ナニを!


ナイニーwo




ドウスィタラー




イインディスクァ?



どんな国の外国人だ!


うむ、冴えない一人つっこみだ。

ヨシッ!


そんな妄想にふけるボクを不思議そうに見つめる親子。
ボ…ボクそんな変な顔してました?










「…ぎょっさん?」



へ?




「ぎょっさんでしょ!」





…は、はい




「ヨーコ、覚えとー?」



ヨーコ?


ヨーコ…



!!!!!!!!!





オノヨーコ!!!




いや、これはギャグではなく本名、小野陽子。
幼なじみで男子は影でヨーコを




『レリピー』



と呼んでいた、オノヨーコ!



スポーツ万能、オノヨーコ!



成績イマイチ、オノヨーコ!



レリピーレリピー、オノヨーコ!





そんなオノヨーコ…






「おぉ、久しぶり」
と駆け寄り、ベビーカーに乗っている小さい方と握手した。


「そっちはヨーコじゃなかよ、ガハハ」



ガハハって…



「結婚したと?」



「はやりのできちゃった婚!ガハハ」



コイツでも結婚できるのか…




ガハハ




「で、この子はリョウ、先月1歳になったんでちゅよー」
赤ちゃんの手を振って言った。
「よろちくー、ギョサーン」
ほぼマリオネット状態のリョウ(1歳)




さっきのガハハはどこいったんだ!


「やっぱ子守唄はビートルズ?」

「ガハッ!もう小野じゃないから違うわ!がはは」



そっか。



そいつは残念だ。


というかビートルズってガラじゃないか。


「今からどこ行くの?」
とヨーコが聞く。

「博多」


「いっしょっちゃんねー、私も博多行ってそっから大阪まで帰るのよ」


大阪?



ガゴン、ガゴン。
そんな話をしていると電車がきた。



「大阪に住んどると?」

「そうや、ワイは大阪に住んどるんや!ガハハ」
嘘くさい関西弁。
しかしこの感じは関西のおばちゃんオーラをまとっている。



ていうかワイって…





そんなこんなで博多まで一緒に行くことになった。
そしてヨーコのガサツな感じがもやもやしていた自分にはちょうど良く思えた。

ガハハ…



(つづく)




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2007年08月03日

12章 帰郷 03

その日の夜、ヒロ兄ちゃんは自転車で家にやってきた。
その顔はもう赤い。
「昭宣、行くぞ!」

酔ってるんですか?
ボクがまじめな話をしたいと言っているのに…
あなた…

「行くって…どこ?」

「そりゃ…あれだ…ドコも休みか?」

「…うん」

「じゃぁ…お前は酒を家からかっぱらってこい」

「は?はぁ」

ビール日本酒を店から持ち出し自転車に乗る。

「で、ドコ行くの?」

「ウチ」

「はぁ…」

10分後ヒロ兄ちゃんの家についた。
ヒロ兄ちゃんの家は代々医者の家系でいわゆるお金持ちってヤツだ。
小さい頃はこの家の庭でかくれんぼとかしたものだ。
さっきの公園より遥かにでかい庭に寺並みの家がそびえ立つ。

「まあ上がれや、誰もいないけど」

「おじゃまします、おばさんたちは?」

「さあ?」

まあ正月ですからね。


2階のヒロ兄ちゃんの部屋に入る、何年ぶりだろうか?
いつ見ても殺風景な部屋。
ベッドと机、そして小さな本棚、それしか無い。
服や他の本はどこにあるのだろうか…



「なにもないね…」

「まぁ大体東京に荷物あるからな、でも東京にもなにもないな、あはは」

「あはは…」
どうやったらこんなに生活感無くせるんですか?


「お前はお茶な」

「はぁ、ですよね」
ボクは冷たい物とかは食べたり飲んだりしてはいけないことになっている。
もちろんアルコールもやめておいた方がいい。

「で、どうすんだ?」


いきなり〜!!

まあそのことを話しにきたんだもんねぇ


「…いや、どうしようかと思ってさぁ」

「まぁおばさんたちからしてみればずっと東京にいる訳にもいかんしなぁ…何悩む必要あるんだ?こっちでいいじゃん?」

ちょっとニヤケながらヒロ兄ちゃんは言った。

この人…


「だってねぇ…」

「だって?」

「杉浦先生とか良い先生だし…ヒロ兄ちゃんもいるし…」

「はぁ?」

「はぁって」

「マイちゃんカワイイよな」










「青春て…いいなぁ」











「まだ付き合ってないんだろ?」


「まだって…そんな」


「お前、ニブオソだな」


「ニブオソ?」


「鈍くて、手が遅い」



そのまんま〜!!



「鈍いって…」


「お前あそこまでいろいろマイちゃんにされて何も感じない訳?」



「何も…って?」




「お前は純情幕末伝だな、ほんと」


…牧瀬里穂ってことですか?


「あの子はお前のこと好きだぞ、絶対」







まさか…




「そんなこと言われると明日会いにくくなっちゃうじゃん!」




「!?福岡来てるの?!」


「うん、おじいちゃん家があるんだって」



「…お前九州男児ならそこまでされて明日何も無いなんて…ないよなぁ」




「無いと思うけど…」



「はぁ?」



「だってさぁ…ボク白血病だし…」




「…それが何の問題があるんだ?」

ヒロ兄ちゃんは少し怒り口調で言った。


「お前白血病だったら恋愛しちゃいけないって言うのか?」


「そんなんじゃないよ!…でも」


「もし、ボクが死んだら…」
と言ったらなんだか切なくなってきた。



「お前は死ぬつもりで病院に行ってるのか?」
「それに、付き合ってなかったらあの子はお前が死んだら悲しまないとでも思ってるのか?」


「…」






「お前はそれで後悔しないのか?」










ボクは何も言えなかった。

必ず後悔する。

そんなのはわかってる。

でも、この病気はそんな簡単な物じゃない。

ただでさえ辛いのに…マイにも同じ思いをさせたくはない。

ボクはこの病気がみんなに辛い思いをさせていると思った。
だからこそ、マイには言えない。
今の気持ちも…病気のことも…



「ちょっと言い過ぎたかな?」

ヒロ兄ちゃんが沈黙を破った。

「ううん」
ぼくは顔を横に振った。




「まあとりあえずおばさんたちには俺から言っとくよ、東京の病院で治療させてやって下さいって」


「ヒロ兄ちゃん…」


「まぁおばさんの実家も東京だしな、なんとかなるだろ」
「そのかわり…」

「マイちゃんのことなんとかしろよ」



「うん」




なんか恋愛のことでこんな大切なこと決めていいのかな?

でも、なんか…そんなことだからこそ決めた方がいい気もした。

結局、ボクは後悔をしたくない。

それがたとえどんなに小さなことだって…





そのあとヒロ兄ちゃんと思い出話を少しして家に帰った。
家に着くと深夜の1時を回っていた。






(つづく…)
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2007年08月02日

12章 帰郷 02

福岡に戻ってきて数日経った。
目の前には残りのおせち…

そう、あっと言う間に年を越してしまった。

去年はいろいろあったな。

そして今年もいろいろあるだろう。

なんてこと考えたりしたりして…

あれからまだマイとは連絡を取っていない。

だけどマイからはメールが来ていた。

『あけましておめでとう』

って。

一日遅れだけどメールしよう。

これくらいはね…


あ…け…ま…して…お…め…で…と…う…

っと

文字を打つのが遅いボク。

パソコンってのはなんでこう文字バラバラなのかね?

一向になれません。

そしてメールには今福岡に帰ってきて来ていることも書いた。



送信…っと



♪〜

送信ボタンを押すと同時に携帯が鳴る。


えっ?マイ?!


ではなくヒロ兄ちゃんからの電話だった。


「おー、あけおめ」



「あけましておめでとうございます、帰って来たと?」


「あはは、博多弁になってきとーな、昭宣。帰って来たよ昨日」

「ヒロ兄ちゃんこそ博多弁になっとーよ」

「あはは、こりゃしかたなかね」

なんでみんな地元に戻ると言葉がもどってしまうのだろう。
ただ、ヒロ兄ちゃんとは東京で標準語でしゃべっていたからなんか少し恥ずかしい。

「じゃあ東京人は標準語でしゃべらないとな…」
「今日どうだ?」

「うん、大丈夫」

「まあ今親戚とか来とるから夜どっかで飯でも食いながら話すか」

「そうだね、何時位?」

「まだわからないからまた電話するわ」

「オーケーです」

「じゃあな」



結構時間あるな…


テレビでも見るか!


…でもまあ久しぶりだしぶらぶらするか。


で、ボクは近所を散歩することにした。








さむっ!



まあそれでもなんか気持ちがいい。

故郷があるっていいな。

なんて思いながら懐かしい道を歩く。


するとそりゃまた懐かしいとこに着いた。


公園。

ここは小さいときは兄貴とかヒロ兄ちゃんと遊んだりした公園。

そして、初めて人の髪の毛を切ったのもこの公園。

初めて好きな子に告白したのもこの公園…





懐かしいな…



あまりの懐かしさからボクは得体の知れないコンクリートの山に走って登った。

そうそう、ここから砂落として遊んだな…







今思い起こすとここから砂を落として見てただけ。

だけどなんであの時は夢中になって日が暮れるまでそんなことしてたんだろう?

少し大人になってしまったボクにはその楽しさはもうわからない。

でもなんかあの時の自分がうらやましく思えた。





…やってみっか!


ボクは下に降りて砂を取り、その2mほどの山を走って登った。




サラサラ〜…











う〜ん






面白くない。



いや待てよ?


たしか…砂場の角っこら辺の上澄みの乾いた砂が速かったはず。





やるか?




ボクは砂場へ向かった。








いや、まてよ?
たしか滑り台下の湿った砂を山の上で乾かしたヤツが一番速かったような…



ありの巣付近の砂だっけ?




ボクは一人で昔を思い出し色んな砂を集めてみた。


すると

「おにいちゃん、なにやってんの?」

と近所のガキがやって来た。


「…砂をここから落としてんだよ」


み!見られた!



「バカじゃない〜?」





!!!!



ガ〜〜〜〜〜ン



このガキ!!



「ま、まぁお前はこの俺の砂の速さに勝てる砂を集められないからな」


何言ってんだ、俺。



「はぁ?そんなの勝てるよ」




ふふ、所詮はガキ、たやすいのぉ。




「じゃあお前、砂持って来て勝負な」




「やんない、じゃあね」






!!!!!!!




ガ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン!!!!




最近のガキは…



ゲームっ子め!




いいさ、いいさ、俺はこれで…この砂で…



音速を超える!





見てやるさ!





スピードの向こう側!!











サラサラ〜〜〜…


















あれ?砂が見えなくなって来た…

















日が…暮れてる…




ガ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン!





まあ一つわかったことは


今やっても楽しい


ということだな。






♪〜





さすがヒロ兄ちゃん!


タイミングが良すぎるよ!





「もしもし?」




「あけましておめでとう」











女の子の声…








「今、家?」





????







マ…マイ!!





「あ、あ、あ、あけましておめでとう」


「あはは、ことよろ〜」
「今何してんの?」





何って…




砂をサラサラ〜〜っと







「散歩?」


いつもの疑問形。




「そっか、えっとね、わたしね…」





「今おじいちゃん家来てんだ!」





「そう…」
「…」







「おじいちゃん家?」






「うん、でもなんか暇でさ、アッキーなにやってんのかなと思って」










ちょちょちょ、ちょっと待って。




おじいちゃん家?






確か…







福岡!








「マイ、今福岡いるの?」





「えへへ、そうだよ、びっくりした?」






!!!!!!


ま、マジですか!!!!





「そ、そりゃびっくりするよ!」




「でも私、毎年お正月はおじいちゃん家だよ」



「そうなんだ」



「アッキーこっちにいつまでいるの?」












「未定…かな?」





「東京戻んないの?」




この子、するどい…



「い、いやぁ〜…戻るよ、決めてないだけ、マイは?」



「明後日までいるよ」



「そ、そう…」



「アッキー初詣行った?」


「うん行ったよ、成田山、マイは?」


「私は八坂神社」


「そっか」


「アッキー体はどう?」







「ぼち…ぼち?」




「あはは、じゃあ遊んでよ!」




コ、コイツ…



かわいいなぁ…





「いいよ、どうしよ?」



「じゃあ…『もうで』しようよ」




もうで?




「もう初詣しちゃったから『詣で』」




あぁ



「いいよ、マイ博多駅まで来れる?」

「行けるよ!ちょっとバカにしないでいただける?」
とちょっとすねた感じで言う。


「じゃあ11時に駅で、着いたら電話して」

「わかった、じゃあね」

「うん、じゃあ明日」




ツーツーツー












なんてことだ。








運命って怖い!










結局ヒロ兄ちゃんから電話があったのは2時間後のことだった。





(つづく…)



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2007年07月29日

12章 帰郷 01



帰ってきた…


帰ってきたよ、福岡

美容師になるまでは帰ってこないと決めたんだけど…

無理だった。

なんかそんな思いがボクを切なくさせた。

ただ、故郷というのはなんともいいものだね。
まあ福岡辺りだと東京とはたいして変わんないんだけどさ、ホームグラウンドってのはいいもんだね、なんか。
「おかえり」
ッて言ってもらってってるような気がする。
まずは何はともあれ実家へ。
ウチは酒屋と言っても造り酒屋とかじゃないから趣きみたいのは何も無い、ただ、ただ、ボロい。

入り口の水着のお姉ちゃんのポスターがボクを出迎えてくれた。

「ただいま」

と言ってもみんなで帰ってきたので誰がいる訳でもないが実家特有の臭いが帰ってきたと思わせた。

いっちょん変わってなかね。

と帰ってくると何故か言葉が戻ってしまう。
こうなると東京に戻った時が大変で恥ずかしくてしゃべれなくなってしまう、だからちゃんとするまで帰ってきたくなかったのだけれど…そげんこといってもしかたなか。

ちゅうても博多弁やと何のことはなしとうかわからんくなるから標準語に変換せんとな。

「とりあえずお茶入れるわ」
と母ちゃん。

でんと上座に座る親父。
何も変わってない。


「昭宣」
と親父がおもむろに口を開いた。

「おまやー東京の病院じゃのーてこっちの病院にやりない」
(お前東京の病院じゃなくこっちの病院にしなさい)


えっ…


そんなこと考えてもいなかった。


「そんなこといっても…」
ボク自身、杉浦先生に信頼をし始めていたし、ヒロ兄ちゃんのいる環境は安心させた。
だから今更こっちの病院といっても困る。
ただ、親からしてみればこっちの病院の方が都合がいいこともわかっていた。

「母ちゃんもねその方がいいと思うのよ、確かにヒロ君がいるのはありがたいけどあんたの科ではないわけだし…」


「…でも…」

先生のこととか病院のこととかを考えてはいたのだがボクの脳裏にはマイの顔が浮かんでいた。

もう、会えない…

そう思うとやはり東京の病院にいたい。


「こっちにもいい病院あるしこっちの方が落ち着いて治療に専念できるでしょ」


確かに一理ある。

しかし、そう言われれば言われるほど東京に未練がでてくる。

「…」


やはり、家族のことを思うとこっちの病院にした方がいいに決まってる。

普通だったら迷うこと無いんだけれど…


やはり…



「…ちょっと考えていかな?杉浦先生はいい先生だし、ヒロ兄ちゃんも科は違うけど病気のことわかってくれてるし…安心して治療出来ていたから…」
「母ちゃんたちが言うこともわかるんだけど…」





親父と母ちゃんは少し沈黙し、
「わかった、でも早く決めなさい、手続きとかあるから」

と、母ちゃんは言った。




ボクはお茶を飲み干し自分の部屋に戻った。



懐かしい自分の部屋。
一根前のまんまだ。

ボクはベットに横になって携帯を見つめた。

いつもどうりマイの番号を眺めていた。



実家に戻ることも言わず帰ってきてしまった。


もうボクにはどうしていいかわからなかった。



♪〜

携帯が鳴る。

こういう時の着信はやたらびっくりする。

かけてきたのはヒロ兄ちゃんだった。


「おー昭宣、福岡着いたか?」

「うん、さっき着いた」

「そっか、まあゆっくりしろや」

「うん」

「っでお前どうすんだ?」


…へ?

「どうすんだって?」

「病院移るのか?」

「ああ…聞いてたんだ」

「おばさんからな、で、どうすんだ?」


「…どうしたらいいかな?」

「まあ地元でじっくり治療に専念するのもいいかもな」

「でもさ…」


「何迷ってんだ?」


「うん…」

ボクはなんかマイのことで病院をどっちにするか迷ってるなんてなんか不謹慎な気がして言えなかった。


「じゃあ、俺も来週そっち帰るからその時話そうか?」

「うん」

「俺はお前が悩んでいる理由は大体想像つくけどな」

「…」


「まあそっち言ってから聞くわ、じゃあな」


ツーツーツー…

一方的な切り方。

そんなことより想像つくって…


まあクリスマスの時とかヒロ兄ちゃん仲介してるからな…



ボクはとりあえずヒロ兄ちゃんが帰ってくるのを待つことにした。


そしてその日は寝ることにした。



(つづく…)

タグ:福岡 病気
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2007年07月28日

11章 思い 02

そろそろ今年も終わる。
そんな中、雪も降ってきた。


しかし!



ボクは今、暖かい。



どこがと言うと



頭が暖かい。

帽子がね、暖かいんですよ!




そして心も暖かい。



ボクは腕を組み、窓に映った自分を見ながら


「あんだねぇ、そんなことばっか言ってっからダメなんだよぉ!」

と、テリー伊藤のマネ。



に…


似てる!



サングラスがあれば…





そんなことはさておき…


今日もやってきました。


マルク…


看護婦さんと先生がやってきた。





行けるのか?



乗り越えられるのか、ボク?



いや!行ける!




うん、逝ける!


ボク…今日は乗り越えられる気がするよ…






根拠無し!





そう思ったら逆に恐怖が襲ってきた。





そんな時は


『080〜、080〜』



心の中で唱える。





「昭宣君、調子はどうだい?」
注射器をいじりながら先生が言う。


「は、はい…ぼちぼちです」



「そっか…なにより」



えっ?!


いいの?


こんな答えで?



「じゃあ、行くよ」




来い!





いっ!



いぃぃいぃぃぃっぃいぃぃぃぃぃぃぃ!!











力の入らない体に麻酔が拍車をかける。






次が本命!


さあ!来い…

ぐりぐり…









はぐぁ!!!




















(中略)





「よし終わり」


ボクはまたまた汗びっしょり。




「昭宣君」


はい?



「一応、この間、地固め治療が一旦終わってね」
(地固め治療=抗がん剤治療)

はい。

「今回の結果を見てからだが、昨日までの値も悪くないし…」




はい…




「一回退院しようか?年末だし」




ま、マジ?



やった!





「まあ、来年の7日まで退院かな?そのあとは大部屋に移ってもらおう」







え!


大部屋…





ま、いっか!





というか、今まで何とも思ってなかった外界がこんなにうれしいものとは!


何しよう?



何しよう!



そんなこと言って「やっぱ無し」なんて言わないでよ先生!



ボクはそのあとやってきた家族に報告。


すると親父が

福岡一旦帰るか」
と言った。





う、うん…






すぐですか?



マイ…




しかし、プレゼント貰っといてなんだが…


会いずらいよ…



これからもまた入院生活だし…


会ったら病気のこと隠せない、というかバレる。

そんな気がした。







そして後日、ボクは一時退院した。

その足で福岡に帰ることにした。


やっぱり…会えない。

でも、会いたい。


ボクは携帯のマイのアドレスを見ながら福岡に向かった。



(つづく…)

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2007年07月27日

11章 思い 01



ボクは外を見ていた。

あれから何日経ったのだろう。

友達やマイなど見舞いに来てくれたらしいが無理言って看護婦さんに断わってもらっている。

腫れぼったい目ではさすがに会えないからな…

というより、会いたくない。
今のボクにはボーっと外を見る意外なかった。

パソコンにも目を通さずただボーっと…

いつもの抗がん剤治療は続いている。
最近ようやく髪の毛が抜けてきた。
心構えがあったせいかそんなに落ち込むほどではなかった。
ただ、力が入らない。
何か持つにも『ポロ』っと落ちたり…
そんなこんなで外を見るしか無かった。

今、ボクの力で出来ることは無いように思える。
今ボクに出来ること、それは

願うこと。

しかないのかな…



ただ今日は思いつきであの休憩所に行ってみることにした。

よろよろと歩いて休憩所に…



やっさんだ…


ボクはあえて避け遠めの席に座った…が
すぐバレてやっさんが声をかけてきた。

「おー、昭宣!こっちこいや」


は、はい…


よろよろ…


やっさんの前に座った。

今日は何人かいっしょに話していた。

「昭宣、小児科の方には行ったか?」

小児科?


なんで?



「いや、行ってないです」

「なーんだよ!お前!この病院にいて小児科行ってないとは!」



は?










!!!



ヒロ兄ちゃんが言っていたアノことか!



「よし、じゃあみんなで目の保養に行きますか!」

と言って立ち上がる。


…そんな気分じゃないのに

と思いつつもついていく他無い。

5人ほどでエレベーターに乗り2階へ。



2階は変な活気に包まれていた。

ワーだのキャーだの子供の声が行き交う。

「昭宣、この小児科のアケミちゃんが俺のおすすめだ」

…はぁ

勧められても…ねぇ


「あ、いたいた」
といって指を指す。

あぁ。


かわいい。


そして、ダイナマイト系ですな。

おじさんがいかにも好きそうなタイプだ。


「よし、みてろよ」
と言って廊下を歩いている一人の看護婦さんの方に向かって歩き始めた。


何をする気だ?








ボクはそれを眺めていた。


看護婦に3メートルほどに近づいたとき、やっさんはよろけて膝をついた。


あ!大丈夫かな。


と思ったと同時にアケミちゃんが近づく。


「どうしました?」

といってやっさんの肩を支える。


やっさんは支えられていない方の手をアケミちゃんに回ししがみつく感じになる。

「いやぁ、すまんすまん、ちょっと薬が回ってきたみたいだ…」


…まだ抱きついている。



そういうことか…



「私の肩につかまって下さい、病室はどこですか?」
アケミちゃんが聞く。


「ああ、この上の階なんだけれども…」
と言ってボクをちらっと見た。

その瞳はまさに『してやったり!』だ。




そのままやっさんは自分の部屋に連れられていってしまった。



「やっさんはいつもバカだなぁ」
と言ったのは一緒についてきた人。
年齢は30過ぎかな?

とゆうか、ここまで来たあなたもバカ。
ボクもバカ。

いつもと言うことはこんなこといつもやってるの?あの人。


やっさんにはボクから

『病院満喫バカ』

の称号をあげよう。



「ばかばかしい、戻るか」
と言ったのは50ぐらいのおっさん。

みんな休憩所には戻らず各々の部屋に戻っていった。





力の入らない体が余計力が入らなくなった。


ただ、あのしてやったリ顔を思い出すとなんだかにやけてしまうボクがいた。


そして同じ病気の人があんなことしてると思うとちょっと気が楽になった。


やっさんはそういう人なのかな?
ちょっとウザイが憎めない、そんな人だ。


ただちょっと目の保養と言う目的で小児科に行ったのにそれをしてこなかったことが残念に思えた。



そんなことを思ってまた外を眺めているとヒロ兄ちゃんがやってきた。




「昭宣君、調子はどうだい?」
と杉浦先生のマネ。
ちょっと似ている。

「はぁ、ぼちぼちです」


「そっかぁ、ぼちぼちかぁ、そりゃ残念」

「なにが?」


「今日は何日か知ってるかい?」




何日?


「25日…クリスマス…」



はぁ…



クリスマス。





無く子も黙るクリスマス。





クリスマス…




クリスマス…






「そうだねぇ、クリスマスだねぇ」



「…うん」



「いやぁ、さっきね、長い髪のブーツを履いたかわいらしいサンタが俺のところにやってきてねぇ…」




長い髪のブーツを履いたかわいらしいサンタ?



「はぁ、それはよかったね」




「よかったね、で済ましていいの?」












な、なに?










長い髪の



ブーツを履いた





かわいらしい




サンタ?




「そのサンタがアキにこれを渡してくれって預かった物があるんだよ…」





!!!!





ヒロ兄ちゃんは後ろに隠していた紙包みを前に出した。





「えっ!」





ボクはその紙包みを受け取った。





「ちゃんとお礼のメールしてやれよ、じゃ」
と言って去っていくヒロ兄ちゃん…








なに?




ボクはその紙包みを開けると紺色のニット帽と一通の手紙が入っていた。











二つ折りの手紙を開ける。




『 Merry Christmas アッキー

最近寒くなってきたけど体の調子はどうですか?

元気になったらまた遊びにいこうね!

to MAI』














!!!!!!!!!!











マジで!








まさか!







まさかですよね!







あの子は人をその気にさせてもて遊ぶタイプの子?





そうでないことを願う!




長い髪のブーツを履いたかわいらしいサンタさん!




Merry Christmas!!





では、みんな御唱和下さい。




1.



2.




3.







ダーーーーーー!!!






アリガトーーーーー!!!








ボクはとりあえずシャワーを浴びにいった。



そしてすぐに上がり…




帽子をかぶってみた。


臭い頭じゃホラ、かぶりたくないじゃん?
臭くなるじゃん?







い、いけてるじゃん!





坊主だから?坊主だから?








似っあうじゃ〜〜〜〜〜ん!!







ボクはガラス越しに帽子をかぶった自分を映しニヤニヤしてみた。







そして久しぶりにパソコンを開けた。


もちろん、メールを打つ為に…




(つづく…)
タグ:恋愛 病院
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2007年07月26日

10章 再会 03


汗…
この抗がん剤治療に慣れる日はいつ来るのだろう。
力の入らない手にはじっとりと汗が滲む。


そんなこんなで今日の治療も終わった。

いやぁ、痛みとか副作用とかそういった辛さは無い。
しかし、いろんなものを刺されたり、飲んだりといった反復が余計ボクの具合を悪くさせてるんじゃないかって思うんです。
とゆうか細胞殺してるからね…

しかし、やらなくては…


髪の毛とかすぐ抜けてくると思ってたんだけどそうでもないみたい。
ただ、坊主ってのはどうにも伸びるのが早いらしい。
ジョリジョリ感も無くなってきた。
ボクは今、マリモですな。
この状態で抜けたらどうなるのかちょっと楽しみでもある。

そんな頭をなでなでしていると家族がボクの部屋に入ってきた。


「お疲れさま、今の看護婦カワイイな」
兄貴は能天気だな…
しかし、そんなところはそっくりだと思う。

「…」

「…」

「…」



時間がゆっくりと進む…
みんな検査のことが気になって会話も無い。


母ちゃんはいても立ってもいられず自分が買ってきたリンゴを剥き始めた。


シャリ、シャリ…


いつもは聞こえないような音がこの病室に響く。


みんなでリンゴを食べながら待った。


ちなみにボクには食べ物の制限とかは特にない。
冷たいものはダメらしいがちょっと温めれば平気らしい。



シャクシャクとリンゴを食べる音が響く。

あっと言う間に食べ終わってしまった。




「…」


無言の時間が続いた。




ガラガラ

「魚住さん、検査の結果出たんでこちらへどうぞ…」


待ってましたとばかりにみんな一斉に立ち上がった。


ボクもヨロヨロと立ち上がった。






「…」

母ちゃんがボクの腰あたりを支えながら診察室へ向かう。
診察室に着く間、とうとう会話は無かった。
それだけみんなが緊張していた。
それだけみんながこの結果がどれだけ大事な物かわかっていた。




「どうぞ」の声とともに今日も待たずに診察室に入る。






「昭宣君、治療で辛いこととかはないかい?」

「はい、大丈夫です」

そんな会話から始まった。

しかしそんな会話も長くは続かない。






「で先生、検査の結果は?」
と聞いたのは親父。





「結果なんですが…」





もう、その一言でボクは結果が読めてしまった。
しかし、みんな先生の一言に息を飲む…





「残念ですが一致には至りませんでした」









たはは…



なんだって?





冗談でしょ?




「一致しなかったってことは…どうなるんですか…」

親父が聞き返す。






「家族の方からの造血幹細胞移植はできないと言うことです」
先生は表情を崩さず言った。




「ただ、今ドナー登録をされている方からの造血幹細胞移植の希望は残ってます」


「ドナー…」



「昭宣君が白血病とわかった時点でドナーの検索は始めています、ですので今はそれに希望を持って治療に取り組みましょう」










母ちゃんは声を上げて泣いた。




兄貴も泣いていた。





親父は奥歯を噛み締めながら震えていた。







そんなみんなを見てボクも泣いた。







その日ボクらは病室で抱き合いながら家族の絆を確かめ合った。



『ドナー』と言う弱い響きにかすかな希望を託し…




(つづく…)
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2007年07月25日

10章 再会 02

治療4日目。

昨日のショックをまだ引きずっている。

あの後、パソコンを見るとマイから何通かメールが来ていた。
メールの題だけ上げるこうだ…


一通目
『ディズニーランド楽しかったね』

二通目
福岡に着いたかな?』


三通目
『チャコと散歩してたら』


四通目
『今年は私も福岡のおじいちゃんの家に行こうかな』


五通目
『お母さんに会ったよ』















返信もしなかったのにこんなにメールくれるなんて…

ただ、返信が出来ないボクがいる。
なぜならボクがウソをついてしまったから…



しかし、五通目のメールには最後にこう書いてあった…


『あした、お見舞いにいくね、迷惑かな?』




迷惑なんてとんでもない!
でも会いにくいボクがいて、
会いたいと思っているボクがいる。
そしてメールも打てずじまい…


どうしよう…


今の治療を見たらマイはボクの病気がなんだかわかってしまうだろうか?


そしたら…



考えたくない。





ただ一言メールに「会えない」と書けば済む話。

でもそんなこと書けない。

だって…

会いたいもんな…





そんなこんなをパソコンの前で悶々と考えていると母ちゃんたちが入ってきた。


「秋吉さんからメール来てた?」

母ちゃん…

「お見舞い来てくれるといいねぇ」





しかたない




パソコンを忘れたボクが悪い。
そしてそれを母ちゃんに持ってきてもらうよう頼んだボクが悪い。


そうだ…



ボクが悪い…





「…」

親父は何のことだかわかっていない様子。



「兄貴は?」
そう、兄貴がまだ来ていない。



「なんか下でヒロ君と話してたわよ」



「今日何時からかとかって先生言ってた?」
と母ちゃんがボクに聞く。

そう、今日この間の検査結果が出る。
それによってボクの今後が大きく変わる。

「今日の治療終わってからじゃない?」
よくわからないがそう言ってみた。


「…」



親父は椅子に座りながら窓越しに外を見ている。

今日はいつになく曇っている。

あれから寒さも増し、ようやく冬将軍到来…といったところか。


「もうすぐクリスマスねえ…」



そっか…
そうだった。
すっかり忘れていたよ。



「クリスマスと言えば昭宣が10歳のときのクリスマス!」
「お兄ちゃんが『サンタなんていない』ってあんたに言って、そしたら『絶対にいる!』ってケンカになっちゃってねぇ、泣きながらケーキ食べてたの思い出したわ」


ははは…

「あのときのお父さんの困った顔!フフフ、今思い出しても笑っちゃうわ」
押し入れに入れといたプレゼント出すに出せなくなっちゃて…」


「そんなこと…あったか?」
と親父。

ようやく声を聞いた気がする。


「あれももう10年も前のことなのねえ…」
と言って母ちゃんも外を見つめた。











すると


「アキ」
とヒロ兄ちゃんと兄貴が入ってきた。


そしてその後ろには…








マイ!!!






「こんにちは」
軽く会釈。
それに応じて母ちゃんたちも軽く会釈。
兄貴はニヤニヤしている。


「あのこれ…」
と言ってマイは花を差し出した。

「ありがとう」
ボクはその花を受け取った。


「きれいねぇ、じゃあちょっと花瓶に水入れてくるわ」
と母ちゃんが花瓶を持って出て行く。

「下で正雄と話してたら秋吉さんと会ってさ、部屋わかんないって言うから一緒に来たよ」
となにやら含み顔でボクを見ながらヒロ兄ちゃんが言った。

「どう、調子は?」



「う、うん…」
ボクはマイの顔を見れずにいた。


「きれいなお花ねえ、秋吉さんありがとうねえ」
と言いながら母ちゃんが帰ってきた。



「じゃあ、お母さんたちはちょっとお茶してくるわ」


ニヤケを隠しながら母ちゃんが言った。

「うん」


「秋吉さん、ゆっくりしてってね」
といって出て行った。











どうしていいものやら…








「来て迷惑だった?」
と不安げにマイが言う。



とんでもない!



あえてうれしいよ!!




「いや、そんなこと…ありがとう」


「ううん」
と言ってうつむくマイ。


「ごめんね、ウソついて…」
ボクはなんて言っていいかわからずとりあえず素直に謝った。


「ううん、気にしないで」
「入院のこととかって言いにくいもんね」

そんな言葉で少し救われた気がした。


「それより!お兄さんとアッキー似てるね」


「あはは、よく言われる」


「あと、お母さんも!」


「あはは、それもよく言われる」


「みんな福岡から来てくれてるんだ…」




「い、いやー、母ちゃんの実家にみんな来てるんだよ、ときたま、ときたま」


「そうなんだ」




「そうそう、メールにも書いたけどこの間チャコがね…」



と、病気のボクを気遣ってかどうだかわかんないけど、色んな話をしてくれた。

そして、マイはボクの病気のことには一言も触れなかった。

そんなちょっとしたマイなりの優しさがボクの気持ちをグッと高める。





そろそろあのリードふんずけ事件から一ヶ月がたとうとしている…



こうしてメール沢山してくれたり、見舞いに来てくれたり…
少しは期待していいのかな?




いや、実際もうしてる。





かなりしている。






マイはどうなんだろ?

マイにはボクがどう映ってるんだろ…





もし、僕の病気が治ったら…


いや、必ず治して言うんだ…


ボクの気持ちを。







「魚住さん、そろそろ治療の時間ですよ」

ちょっと申し訳なさそうに看護婦さんが言う。



「じゃあ、私行くね」


「うん、今日は来てくれてありがとう」



「また、くるね」


「うん、病院寂しいから毎日でも来てよ」


「あはは、本気で毎日来ちゃうよ!?」




マジ?



ボクの期待がよりいっそ膨らむ。




「でも、毎日来たらアッキー疲れちゃうよね」




なに!



そんなことないさ!



「そんなことないよ」




「でも、悪いから…とりあえずまたメールするね」
「今度はちゃんと返信してよ!」


「ごめん、絶対するよ」




「じゃあね」



「うん、じゃあ」




マイは帰っていった。



それと同時に治療が始まった。

まさに天国と地獄。




とりあえず、母ちゃんには感謝。

ボクは注射をされながら思わずにやけてしまった…

そんなボクをちょっと気持ち悪そうに看護婦さんが見ていたことはボクはわからなかった。


(つづく…)

タグ:病院 恋愛
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2007年07月23日

10章 再会 01

10章  再会

治療も3日目に入った。
あれから毎日治療の日々だがまだそんなに副作用という感じはない。
ただ、力が入らない。
力が入らないとネガティブな方向に走りがちになってしまう。

この治療のこと。
家族との血液の照合のこと。

こうまでやることないとそうなりますよ。
早くパソコン来ないかなぁ…

ボクは治療までの間、病院を散歩することにした。

カラカラと点滴の掛かっているヤツを杖代わりにしながら休憩室に行ってみた。

とりあえず椅子に腰掛けテレビを見る。






こういう時のテレビってつまんないよなぁ。

周りを見回す。


病院っておじいちゃんおばあちゃんばかりのようなイメージあったけど全然そんなことはない。
ただ、時間帯のせいかおじさんが多いな…

テレビにもすぐ空き、雑誌を読む。

おお…

エッチですな…





おお!





おぉ↓








黙々と週刊誌のグラビアページを読むボク。



「おにいちゃん、そういう子タイプかい?」

へっ?

40過ぎぐらいのがたいのいいおじさんが話しかけてきた。


「い、いや。ボク、違います」
動揺するボク。

実際タイプではない。

「そー、俺はその子なんてグッときちゃうね!」
「まあ、この歳くらいになると若い子なんて同じに見えてきちゃうよ、ははは…」
「お兄ちゃん若いからもう遊びまくりだ!」





「ははは、遊べてないっすね」


「何!ダメだよそんなんじゃ!若い時は遊んでなんぼだろ〜」


す、すいません…


「お兄ちゃんの病気は何だい?」


ストレートですな…


「白血病?です」
いつもの疑問形。


「そうかい、お互い大変だよなあ…」
「俺もそうなんだよ」
「とゆうか、この階の人ほとんどそうだよ、はっはっは」

はっはっは  
って…


「治療いつから?」


「おとといからです」


「お兄ちゃんは急性?慢性?」




何個も種類があるの?


「急性骨髄性です」


「あ、そう…、俺はね、慢性の骨髄性」


「それってなんか違うんですか?」


「あぁ、元から持ってるか持ってないかの違いかな?」
「治療もちょっとちがうんだよ」


へぇ…



「お兄ちゃん、名前は?」


「魚住です」


「下は?」


「昭宣です」


「あ、そう」
「俺は桐島泰行、ここの人からは『やっさん』て呼ばれてるから」
「やっさんって言っても横山じゃないよ…はっはっは」
桐島さんはそういってグッとボクの目を見た。


笑えってか…


「ははは…」
愛想笑い。



「やっさん!」
向こうからまた違う人がやってきた。
そして、またおじさん。


「その子新入りかい?」


「ああ、魚住君」


「魚住です」


「やっさんエロ話ばっかりだから気をつけなよ」
と甲高い声の人。


「あ、ちなみにあの人は荒瀬さんね、大工の棟梁なんだよ」



「…あの人も…」


「あぁ、そうだよ、ちなみに…え〜荒瀬さんは…え〜…」
「荒瀬さ〜ん、あんたの白血病何性だっけ?」
大きな声で遠くにいる荒瀬さんに聞く。


「俺は急性リンパだよ」
荒瀬さんもでかい声で言う。


「だってよ」








この人たちは本当に病気?
というぐらい元気。



「昭宣は彼女いるのかい?」


「あはは、いないっすね」


「じゃあとっかえひっかえだ」



「いや、そんな…」



「ドコ住んでんの?」



「赤羽です」




「あ〜あ、じゃあもう風俗行きまくりだ」
「俺も若い頃はあの辺でブイブイ言わせてたよ、はっはっは!」


「そんな…行ってないっす」

「あはは、たまにだよなぁ、あっはっは」

そんな=たまに

になっている!

「いや…ははは」

行ったことなんてないがちょっともうめんどくさいから笑ってみた。



「いや、最近は俺はもっぱらフィリピン系で…」




やっさんの話は30分以上続いた…












顔の筋肉が引きつってきた。






そんなとき、まさに白衣の天使が舞い降りた。



「桐島さん、時間ですよ!」

ナ〜イス!


「そっかそっか、じゃあまたな昭宣」


「はい、ははは…」


去っていく桐島さん。




ほっ。


おっさんはすごいね。


と、いうかボクも時間だ。





急いで部屋に戻る。

すると母ちゃんが来ていた。






「ドコ行ってたの?」

「休憩室」

「そう…あ、そうそう、これ」

と言ってパソコンを取り出す。


「ありがとう」



「でねぇ…」







なに?



「あのね…」





うん…




「お母さん知らなかったから…」





は…い…?





なに?




なに?





「なに?」

と聞くと衝撃の一言。



「昭宣の家行くときにねえ…会ったのよ…」


「誰?」



「秋吉さんに」




!!!




「で…?」



「いやね、お母さん秋吉さんがあんたが入院してること知ってると思ってね…」















もう、想像はできる…が



「話しちゃったのよ、入院のこと」
「知らないとは思ってなかったしねぇ」
「ほら!お世話にもなったし…」

「あ、でも入院してることだけよ」



はあ…





「で…なんか言ってた?」



「お見舞いに来てくれるって」

「ごめんねぇ…」
「でも良かったじゃない、お見舞い来てくれるっていってるしねぇ」



反省ゼロ。












たしかに、お見舞いに来てくれるのはうれしい。
でもこの前の苦労は無駄になった。



「ごめんねぇ」


「まあ、もういいよ」


「ごめんねぇ…」



母ちゃんは凹んでた。
とゆうかめり込んでた。



「いいよ、気にしないで」


「ごめんねぇ…」




「魚住さん、治療始めますよ」
と看護婦さん。


今日も治療が始まる。








ボクはマイについたウソがバレてしまったことが悲しかった。
というか、ウソをついてしまった自分に…
つかないといけなかった自分に…悲しかった。



(つづく…)
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2007年07月22日

9章 家族 03

数時間後、ボクの初めての治療が始まった。


普通に病室にいるボク。


あれ?


ビニールとかが掛かってる部屋は?


あそこじゃないの?




どうやら違うらしい。


カラカラとやってくる洋服掛けのようなアレ。
点滴とかのヤツね。

スゴい色の液体の袋。
これが抗がん剤!!

さすががん細胞を殺すだけのことはある。

「じゃあこの薬を飲んで下さいね、これは副作用を抑える薬で…」


多い!


抗がん剤より多いじゃん。


でも飲むしかない。


飲んだ後、鎖骨の下にプスッと一発。


う、腕じゃないんだ…

変なとこにばっかいろいろ刺してる気がする…

これは入りっぱなし…






うう…



その後、注射もした。

20分くらいかけてうつ。









ああ、もう気分が悪い。


副作用でなくてその行為がクラクラ…



これが化学治療…




ボクがそんなこんなでクラクラしてるとき家族は別室で検査をしている。

はあ…


これ毎日ですか…






とりあえず、心の中で泣いてみよう。



お〜い、おいおい…


ハクション大魔王の泣き方ね、これ。





治療も一段落すると家族も終わったらしく部屋に入ってきた。

「ここでやるのねえ…」
と母ちゃん。

どうやらそうらしいですわ。
さすがは親、思考回路が同じだ。


「アキ、がんばれよ」
と兄貴。
先生の話を聞いてガラッと態度が変わった。
ただ、がんばりようはない。


「…」
親父…



「なんか欲しいものない?」
と母ちゃんに聞かれボクはハッと気付いた。




パソコン



忘れた…






バカ!




メール出来ないじゃん。




「あの〜、家にヒロ兄ちゃんに貰ったパソコン忘れちゃったんだけど持ってきて」

「あんたはドジねぇ」
「今日はちょっと友達に会う用事があるから明日取りにいくわ」




明日取りにいくということは明後日ね…


まあ、無理は言えない。

なんせ東京さいたま、赤羽はここから距離があるもんね。


そう、家族は当分母ちゃんの実家にいることになった。
そっちの方がここには近いからねぇ。





パソコンを忘れたボク。
それがまさか失態につながるなんてまったく思ってもいなかった。




(つづく…)
posted by NIIL at 12:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 9章 家族 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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